シャープが、アイパッドへ対抗するべくガラパゴスを発売した。購入前の相談ということでシャープへ問い合わせたり、パンフレットで調べてみたが、今ひとつピンとこない。ならばと、梅田のヨドバシカメラへ実物をさわりに出かけることとした。
右の写真は、正確ではないが、だいたいの大きさ比較にはなると思う。
一番上がアイパッド、二番目がガラパゴス、三番目がソニーのリーダー。
外形でみると、アイパッドが、幅189.7mm、高さ242.8mm、重さがWi-Fiモデル
で680g。
これに対し、ガラパゴスは、幅177mm、高さ286mm、重さが765g。
人づてに、ガラパゴスのほうが、アイパッドより軽いと聞いていたが、逆にアイパッドのほうがやや軽いということになる。
画面サイズでは、ガラパゴスがワイド版で、アイパッドより縦長になっている。
この縦長が、僕にとっては、というか、「本」を読むという段になると、どうにも気にくわない。
縦置きで読書しようとすると、1行が不必要に長くなる。日本文の縦書き表示では、上から下へ読みおろすことになるが、あまりに上下が長くなると、目の動きの許容範囲を超えており、長く読もうとすると不必要に疲れるのだ。では、これを横置きにし、見開き表示にすると、1ページが正方形に近くなり、日本語の組み版に慣れた目には何ともとっつきにくい。いわゆるタイポグラフィーという観点からみると、何とも美しくない。
これに比べ、アイパッドの縦横比は、横書き図書を読むにしろ、縦書き図書を読むにしろ、紙の本を読む感覚に近い。
これでは、日本語表示に優れていなければならない日本の製品が、アメリカ製に負けているということになる。事実、そうなっていると思う。映画をダウンロードして観るなら、確かにガラパゴスのワイド画面は魅力だが、こと本を読むリーダーとして見た限りでは、うれしい縦横比とは言えない。
ページ送りもアイパッドのようなスムーズさがなく、ぎこちない動きになっている。一部分を拡大したときも画面が落ち着くまで、文字のジャギーが目立ち読みにくい。要は、動作に滑らかさがなく、ページが落ち着くまで若干とはいえ待ち時間が生じ、スムーズな読書の流れを妨げるのだ。
そんなことを考えると、本のリーダーとして見る限り、ガラパゴスは遠くアイパッドにおよばないと言えるのではないだろうか。
この二つとは別路線を行くのが、ソニーの「リーダー」だ。完全に「本」を読むことに特化したリーダーになっており、「本棚をポケットに」というキャッチフレーズで、6型と5型の2サイズを発売している。アイパッド、ガラパゴスを見た目には、ブラック&ホワイトの画面は地味に写るが、静止画面の文字および画面の美しさは、さすが「eインク」と思わざるを得ない。
タイポグラフィーの面からも、「本」の形に近い美しさを感じる。ただページ送りの時、静止画面に落ち着くまで、一瞬画面が反転する。慣れるまでは、これが読むリズムを邪魔するが、それもこれから改善されていくのかも知れない。
最後に、これは読む立場の人からは関係のないことなのだが、ガラパゴスも、ソニーリーダーも、文章とページを表示するフォーマットが、「eパブ」でなく、「xmdf」で作成されている。たしかに、「XMDFは日本語の縦組みの表示機能を保持しており、処理の複雑なルビや縦中横、行末の禁則処理、外字などには対応して」いるということなのだが、電子出版をめざす零細出版者にとっては、やっと「eパブ」が身近になったというのに、またぞろ「xmdf」について勉強しなければならないという、大きな課題を抱えてしまった感じである。
願わくは、組み版ソフトであるインデザインがこれに対応してくれること。
つまり、InDesignから自動書きだしを行うことで、紙のレイアウトから、そのままXMDFに変換するコンバータを、無償でInDesignユーザーに提供してもらえればと思う次第である。